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​パクッとプリッと制作の話​(原案編)

アナログゲームを自分で作ってみようと思ってからパクッとプリッとの原案ができるまでをまとめます。

ポストマンレースの試遊をしにきてくれた親子がとても仲よさそうに楽しそうにゲームをしているのを見て親子で楽しんでもらえるゲームを作りたいと思ったわけですが、このときにはっとさせられることがありました。

試遊をしている合間にこの親子がイベントの感想や他のゲームのことについて話されていたのですが、その話の中で「ひつじ算も面白かったねー。」というのが聞こえました。ひつじ算というのは、鍋野企画さんが出された同人ゲームで、簡単なルールで遊びながら足し算が身につくといったコンセプトの子ども向けカードゲームです。

当時の私は、知り合いの大人としかゲームをしたことがなく、子どもとゲームを遊ぶことも子ども向けゲームを遊ぶこともありませんでした。それどころか、子ども向けゲームに関して全く無知・無関心で、単純なゲームも多い子ども向けゲームに対して偏見を持っていたかもしれません。

そんな当時の私が、ひつじ算に比べるととても複雑なポストマンレースを十分に遊びこなす女の子がひつじ算を楽しんでいるということを目の当たりにして、あまり簡単なゲームだと楽しめる人が限られてしまうと思っていたけれどもそんなことは全然なく、むしろ親子で楽しんでもらうためには極力要素を減らしてシンプルにしないと遊んでもらえるところまでなかなかいかないのだろうと、考えを改めさせられたような軽いショックを受けたような感じになったのを覚えています。

ひつじ算については後に何度か遊びましたが、子どもでも遊べる簡単なルールでありつつも考えどころもちゃんとありますし、イラストもとてもかわいいですし、大人が遊んでも楽しいとても良いゲームだと思います。むしろ私の中では遊びやすいお気に入りのゲームで、再版されないかなとずっと思っています。

こういった経緯もあって、制作するゲームはできるだけルールをシンプルにしたいと思いました。あと、当時のゲームマーケットでは今以上に子ども向けの同人ゲーム、特に5歳以下の未就学児でも遊べるような同人ゲームがほとんどなかったと思います。ですので、できれば5歳以下でも遊べるようなゲームにしたいと思いました。

「親子でわいわい楽しめるゲーム」、ここでいう親子とは「小学生前後の子どもとその親」、ということをコンセプトにゲームを考えていくことになります。

ゲームのテーマについては、子どもから大人まで万人に好かれやすくとっつきやすいものは何かと考えて、動物にしたいと早い段階から思っていました。そして、動物をテーマにするならイラストはすがのしょうへいさんにお願いしたいなと思っていました。

すがのしょうへいさんは、動物のイラストをたくさん描かれていたイラストレータで、当時はフリーランスで活動されていました。すがのさんの描かれる絵画調でかわいい動物のイラストがすごく好きで、何度も作品展に行って作品を購入したりしていました。

個人的にとても好きな動物のイラストであることと、もともと知り合いでいろいろと相談しやすいということもあって、こちらからお願いしてのちに一緒にパクッとプリッとを制作することになります。

ゲームのシステムについては、子どもと大人がなるべく対等に遊べるものにしたいと思っていたので、すごろく系かパターンマッチング系か記憶系にしてはどうかと考えていました。そして、そのようなジャンルの子ども向けゲームをネットで調べ、レビューサイトを見たり、ショップの通販ページの紹介記事を見たり、実際に購入して自分で遊んでみるということをずっと繰り返していました。

ですが、これといった具体的なアイデアが出ず、気づけばゲームマーケット2015秋が終わり、2016年神戸も終わり、ずるずると時間だけが過ぎていきました。そんなときでも子ども向けゲームをネットで調べることだけは続けていました。

具体的なアイデアを思いついたのは、確か2016年の4月頃だったと思います。その日も子ども向けゲームをネットで調べていたのですが、あるショップの通販サイトの紹介ページでたまたまオポジットメモリーというゲームを見ていました。オポジットメモリーは神経衰弱のようなゲームなのですが、同じものをペアにするのではなく、朝と夜、赤ちゃんとおばあさん、笑顔と泣き顔といったように反対の概念のものをペアにするゲームです。

これを動物に置き換えてみると、動物とその動物の食べものになるかなと思いました。そして、食べものを食べたらうんちをするよなと思ったときに、食べものを見つけるとそれがうんちに置き換わり、食べものと間違えてうんちを見つけてしまうといけないとしてはどうだろうというのを思いつきました。

テーマ的に考えると、動物・食べもの・うんちというのは自然な組み合わせですし、うんちは万人に好かれるものではないものの子どもが大好きなものです。また、うんちをメインテーマにしたゲームというのも多くないと思いました。システム的に考えると、ダミーが動的に置かれていく減らない神経衰弱といったようなゲームを全く知りませんので、もしかしたらめずらしいシステムになるのではないかと思いました。食べものを食べたらうんちに置き換わるというのも、テーマをうまくシステムに取り込めるのではと思いました。ルールのほうも基本的にカードを1枚ずつめくっていくだけにすればとても簡単にできそうです。

うんちというテーマとダミーが置かれる減らない神経衰弱というシステムがゲームの個性として十分に主張できるのではないかと思いました。

早速ダイソーに行ってちょうどいい大きさの値札カードを買ってきて、その裏に手書きで動物と食べものを書きました。そして、白紙のカードをうんちとしました。これが一番最初のプロトタイプです。

その後、身内のゲーム会に持っていき自分を含め大人5人で遊んでみたところ、とても盛り上がって楽しんでもらえました。何より自分自身がとても楽しかったのです。

自分自身がとても楽しめたことで、これは少なくともゲームとして一通り完成させられるところまで持っていけそうだ、これでゲームを制作してみよう、と強く思えたのでした。

2020/5/15 さかしん

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