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​パクッとプリッと制作の話​(制作編)

パクッとプリッとを制作してゲームマーケットで販売するまでをまとめます。

パクッとプリッとのプロトタイプは、ダイソーで買ってきた値札カードを使って作成しました。

値札カードの裏に、動物と食べもののペアを手書きで思いつくままに描いていきました。12種類描いたところで、もっとセット数は増やしたかったのですが種類をこれ以上増やすと難しくなりすぎると思ったので、動物の種類を増やさずに動物1種類につき2セットずつ作って、12種類計24セットとしました。

大まかなルール・ゲームの流れは製品版とほとんど変わりませんが、大好物を見つけた時とうんちを見つけてしまったときのルールが異なりました。

​大好物を見つけた時ですが、食べものは食べられたらなくなるということで、見つけた食べものカードを捨てて動物カードだけ引き取るようにしていました。なくなるはずの食べものが残るのは現実にはおかしいのと、「動物カードと食べものカードを足した合計が多い人が勝ち」といったようなメタな表現ではなく、「おなかをいっぱいにできた動物が多い人が勝ち」という表現をしたかったということも理由の一つです。

うんちについてですが、うんちを見つけてしまったときには何かしらのペナルティを与えようと思ってはいたものの、子ども向けゲームということもあって、マイナスになるなどの直接的なネガティブ要素はできれば入れたくありませんでした。とはいえ、何のペナルティもないとそれはそれでうんちのインパクトが弱くなってしまうとも思っていました。その落としどころとして、「うんちを見つけてしまった次の手番では、そのうんちをお掃除して(捨てて)手番は終わり」としていました。要するに一回休みですね。

このルールでテストプレイを行っていたのですが、自分の番が回ってきたときに大好物を見つけようと急くあまり、うんちを見つけてしまった後の一回休みをまあ忘れるんですね。自分でもよく忘れていました。忘れにくくするためにうんちカードを手に持っておくというようにしても大きな改善にはなりませんでした。

また、一回休みの行動としてカードを捨てるという行動だけをわざわざ手番を消費してすることになるため、ゲームのテンポが悪くなるということもありました。

これに対する改善点として、「うんちは見つけたその時に捨てる」を考えました。次の手番で捨てるのではなく、見つけた手番で捨ててしまうのです。単純に一回休みをしないようにしただけですね。ただ、これだとうんちを見つけてしまった時と大好物でない食べものを見つけた時で結果が同じなので、うんちのインパクトがなくなりすぎると思いました。

いろいろと考えた結果、最終的には「見つけてしまったうんちカードは持っておいて、ゲーム終了時には1枚につきマイナス1点」とすることにしました。結局マイナス要素を入れることになってしまったのですが、うんちのインパクトとゲームのテンポを優先してこのようにしました。

大好物を見つけた時については、より現実に即したやり方にするためにわざわざ食べものカードを捨てるようにしていたのですが、食べものカードの捨て場が別に必要になることや、そもそも食べものカードを別で捨てるということが煩わしいということがありました。

これに対する改善点として、「動物カードと食べものカードをどちらも引き取り両方1枚1点」としました。現実に即したやり方よりも、煩わしさを解消するためにゲームの都合を優先してこのようにしました。

最終的にうんちカードはマイナス1点とするようにしましたが、そうしたくない理由もありました。

一つ目は、うんちばかり見つけてしまった人は最終結果もマイナスで終わってしまうことがあり得ることです。マイナス点で終わってしまうことは1点も取れずに0点で終わることと大差ないようにも思いますが、できれば直接的なネガティブ要素を入れたくないということもあってマイナスで終わることは避けたいなと思っていました。

これについては、大好物を見つけた時に食べものカードも引き取って1枚1点とすることで一度に2点ずつ増えることになり、回避はできないものの緩和はされているので許容することにしました。

二つ目は、マイナスが入ると引き算をしないといけなくなるということです。引き算は小さいお子さんには難しいということもあって避けたいと思っていました。これについては、「自分が引き取っている動物カード・食べものカードから自分が引き取っているうんちカードの枚数と同じ枚数分を横によけておいて、残りのカードの枚数を数える」というように遊び方を工夫して対処してもらうようにしています。

 

ゲームのテストプレイと併せて、すがのさんとイラストをどうするかというお話も進めていました。

どの動物を採用するかを検討していくなかで、動物と食べものは固有のものにしようと思っていたのですが、うんちをどうしようかということになりました。こちらとしては、ゲームのシステム上うんちは単なるマイナス1点のカードでしかなく、また必要なイラストが減るということもあって、うんちのイラストは汎用的なものにしようと考えていました。ただ、動物と食べものは固有なのにうんちだけ汎用というのも不自然ですし、ゲームのシステムとは直接関係ないものの、普段見ることができない動物のうんちを見ることができるということがプラスアルファの価値になるということもあって、うんちも固有のイラストにすることにしました。

ちなみにですが、サンプルで描いていただいた汎用的なうんちのイラストが個人的に気に入ったので、製品の内箱の上側に載せていただきました。

動物を採用する条件としては、あまり種類が少ないと寂しいので、「いろんな動物が出てくる」としても違和感がないぐらいの種類にしたいと思いました。具体的には最低でも10種類以上にはしたいと思っていました。また、動物・食べもの・うんちのすべてが見た目や特徴含め他と被っていないものを選びたいと思いました。

とはいうものの、どの動物・食べもの・うんちを選ぶかを決めるのはとても苦労しました。動物だけを考えると知名度があって他と被っていないものがたくさんいるのですが、食べもの・うんちまで他と被っていないものとなるとなかなかありません。例えば、イヌやネコやサルはそれぞれ見た目は他と被っていないですが、うんちを見てみると特徴に大きな差がないのですよね。また、同じ種類の動物でも、住んでいる地域や季節によって食べものが違ったり、動物園にいるか野生かで食べものが違ったりします。雑食動物はそれこそいろいろな食べものを食べます。動物に対する食べものの一般的なイメージが定着していないものもあると思います。例えば、パンダは一般的に竹や笹を食べるイメージが定着していると思いますが、ゾウやキリンなどはどうでしょうか。

これらを踏まえて、まず知名度のある動物の中から動物とうんちに特徴があるものを優先して選んでいきました。食べものについては野生の動物が食べるものを選ぶようにしました。そして、食べもののイメージが一般的に定着していないものについては、その動物の特徴になるべく合うものにしました。例えば、ゾウについてはエレファントグラスという名前の草を採用し、キリンについては首が長いことから高いところに葉が生えるアカシアの木を採用しました。

ウサギについては、これといった食べものが思いつかなかったため(ニンジンなどはペットの餌のイメージがあるので避けていました)、不採用候補でした。ただ、すがのさんがウサギのイラストをよく描かれていることもあってどうしても入れたかったのでどうしようかと最後まで悩んでいたところ、すがのさんが食べものとしてクローバーを描いてきてくださいました。クローバーはウサギの食べものとしてそれほどなじみはないかもしれませんが、クローバーのイラストがかわいかったということもあってそのまま採用しました。

赤ちゃんについては、動物と表現されるものの中に含めてしまうことに違和感があったので、不採用とすることにしました。ですが、おまけカード的な扱いで追加すれば違和感がないと思ったので、最終的に特典カードとして1セットだけおまけで追加することになります。

こうして、最終的には12種類を選びました。そしてプロトタイプと同じように各種類2セットずつの24セットとすることにしました。

採用する動物が決まってからは、すがのさんにイラストのサンプルを描いてもらってブランクカードに貼ったり厚紙に印刷したりしたものを使って引き続きテストプレイをしていました。

ここで、うんちのイラストも固有にしたことによって、それがどういううんちなのか、そもそもうんちなのかもイラストだけでは伝わらないということがわかります。いわゆるうんちらしい見た目とは違うものも多いため、知らない人からすると、今まで見たこともない物体が描かれているだけなので、よくよく考えてみると当たり前ですよね。

せっかく固有のイラストにしたのに、しかもシステムとは関係ないプラスアルファの価値として足したものなのに、それが伝わらないとそうしている意味がないと思ったので、どんなうんちなのかというちょっとした解説をつけることを考えました。

ですが、カードに直接文字を載せるのはやりたくありませんでした。文字がイラストの邪魔をすると思ったからです。すがのさんのイラストを自分が気に入っているということもあり、できればそのイラストの邪魔になるようなものは載せたくなかったのです。なので、別紙でうんちの解説書のようなものを追加することを検討しました。ただ、これはこれで、ゲームを遊ぶことが主目的なのに、ましてやシステムに関係ない情報を確認するためにわざわざ別紙を見るのかとも思いました。それであれば、ゲームの流れで目に入るように、うんちカードに直接一言解説が載っていたほうがいいのではと思いました。また、制作コストの都合上できれば説明書以外のものを追加したくないという事情もありました。

これらを踏まえて、うんちカードだけで情報が完結するようにうんちカードに動物アイコンと一言解説を載せるようにしました。一言解説については、なるべく短く、難しい漢字を使わないような文章となるように調整しました。うんちカードの変更・調整は制作期間の後半にすがのさんに無理を言ってお願いしましたが、時間もない中うまく調整していただきました。結果的にはこのように調整してすごくよかったと思っています。

その他の調整としては、子ども向けのゲームなので、カードをできるだけ分厚くしました。印刷をお願いした印刷所で一番分厚いものを選びました。標準よりも二段階分厚かったと思います。タイルにすることも考えましたが、イラストをできるだけ大きくしたいということと製造コストと分厚さの落としどころを考えて、タイルではなく分厚いカードにすることにしました。

カードの背景についてですが、すがのさんがとてもきれいでカラフルなものにしてくださいました。当初は記憶の助けとなると思っていたのであまりカードごとの差は出さないようにしようと思っていたのですが、カードが並んだ時にとてもきれいですし、動物・食べもの・うんちのセットを探すときにも見つけやすくなるので、このように調整していただいてとてもありがたかったです。

うんちのイラストもどのような表現にするか難しいところだったと思いますが、すがのさんがリアルすぎずデフォルメしすぎずいい感じのイラストにしてくださったと思っています。

ハエルールというものを考えていたりもしました。

これは、うんちがマイナスになるばかりではなくプラスになってもいいのではないかということで考えたものなのですが、ルールの追加が必要なうえに簡単なルールとして落とし込めそうになかったので、採用しませんでした。

ちなみにですが、このルールが採用される可能性があったため、カエルの食べものを当初のハエからコオロギに変更しています

説明書についてですが、説明書の文章としては細かい調整も含めて10回以上は書き直したと思います。パクッとプリッとは比較的単純なルールですが、それでもとても苦労しました。ただ、早い段階からルールを文字に起こしていたので、入稿ぎりぎりになって急いで作成するといったことはありませんでした。

こうして一通りのデータがそろい、印刷所への入稿となります。

もともとは動物12種類24セットでの印刷をお願いしようと思っており、説明書のカード構成にもそのように記述していたのですが、赤ちゃんカードをおまけカードとして100セット限定で印刷しようということになりました。ただ、いざ見積もりを出してみると、別セットでの印刷では基本料金が別でかかりかえってコストが高くなってしまうため、結局通常のカードセットの一部として製品数分印刷することとなりました。ですので、赤ちゃんカードについては、「限定」という表現を使わずに、単にもともと予定になかったおまけという意味で「特典」とせざるを得ませんでした。あえて限定にしてもよかったのですが、あるものをわざわざセットから外すのもなんか違うと思ったので、そうはしませんでした。

ちなみにですが、第2版以降については赤ちゃんカードはおまけカードという位置づけをそのままに1セットだけ含まれていますし、説明書のカード構成にもおまけカードとしての記述を追記しています。

家に送られてきた製品を見た時にはとても感動しましたね。よくここまでのものにできたなと。

初版については、説明書を折ってカードをチェックして箱詰めするのはすべて自分でやりました。やらなくてもいいかなとも思ったのですが、シーラとヒートガンを購入してシュリンク包装もやりました。なかなか大変でしたが、とても新鮮で充実していたと思います。印刷のトラブルがあり、箱詰めに必要のない時間をたくさん掛けることになってしまいましたが、それさえも苦にならなかったように思います(でももうあんなことになるのは嫌だ)。

こうして完成したパクッとプリッとは、ゲームマーケット2016年秋で初めて世に出ることとなります。

いつもお手伝いをしていたイマジンゲームズさんのブースで委託出店という形で出展しました。

2020/5/31 さかしん

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